忘れじの事件

涙の再会

忘れられない事件があります。

きっかけは一件の相続登記の依頼でした。

依頼者は佐々木清人さん(以下、全て仮名)。「父勇が亡くなったので父名義の不動産を私に変更して欲しいのです。」「分かりました。」「ただ、父は再婚でして、前妻との間にどうも異母兄弟がいるようなんです。でも名前も住所もわかりません。」「戸籍と附票で調べてみましょう。でも、会ったことのない異母兄弟はなかなか遺産分割協議書にはハンコを押してくれないかも知れませんね。」「手紙を書いてみます。」

勇さんの法定相続人は佐々木さんと母の波子さん、姉の上原寛子さんの外、異母兄姉で神奈川県在住の和田幸一さんと香川県在住の北条泉さんがいることがわかりました。

佐々木さんは会ったことのない、和田さんと北条さんに手紙を書きました。ほどなく北条さんから電話がかかってきましたが、第一声は意外なものでした。

「兄はどこにいるんですか!?」

佐々木さんの話では、和田さんと北条さんは両親の離婚により幼くして離ればなれになったそうです。戸籍をよく見ると、北条さんは勇さんの離婚8か月後に産まれています。戸籍上は勇さんの長女ですが、実の父は別の男性(つまり実母の再婚相手)で、和田さんと北条さんは異父兄弟だったのです(民法772条による離婚後300日以内の出生=嫡出推定)。

やがて和田さんと北条さんは30年ぶりの再会を果たしました。感涙に咽ぶ北条さんは、佐々木さんに何度もお礼の言葉を述べられたそうです。

かくして全員の印鑑が揃って無事相続登記完了。

とても印象に残っている事件です(話には一部フィクションを加えています)。

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